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【論文紹介】五十肩の新たな治療!カテーテル治療について

[2025.05.11]

こんにちは!福岡ペインケアクリニックの坂井です。

今日は「四十肩」「五十肩」と呼ばれる肩の痛みについてと最近世界で大注目の新しい治療法「痛みのカテーテル治療」を中心にお話します。

五十肩ってどんな病気?症状は?

みなさん五十肩って聞いたことありますよね?四十肩・肩関節周囲炎・凍結肩と様々な呼び方があり、整形外科的には凍結肩としましょうと最近呼び方が定まったそうです。肩が痛みでうまく動かせなくなり、夜間の痛みまで出てくることもある病気です。
たとえば、物を取ろうとしたときに肩がズキッと痛んだり、ペットのリードに引っ張られて痛めたり、気づかないうちに痛みがだんだん強くなり、夜も眠れないほどになることもあります。

ドライヤーや身体を洗う動作、後ろポケットに腕が回らないなどの動作で痛みが増し可動域が狭くなります。

従来の治療は?

これまでの治療は、
・痛み止めのお薬
・湿布(しっぷ)
・ステロイド注射
を使って炎症(体の中のはれ)をおさえ、炎症が治まったらリハビリを進めるという流れでした。

でも、なかなか痛みが取れず、夜も寝られない人が多くいるのが現状です。

カテーテル治療って他の治療と何が違うの?

私が行っている「痛みのカテーテル治療」は、細い管(カテーテル)を血管の中に入れて、一時的塞栓物質を痛みの原因の炎症血管に投与し炎症血管(モヤモヤ血管)を減らします。従来の湿布やステロイド注射は周りから炎症を減らし、鎮痛薬は全身に効能がありピンポイントではないですが、痛みのカテーテル治療は血管の中から直接炎症を減らせます。
この治療をすると、2~3週間で肩の夜の痛みがぐっと減り、1~2か月で日常生活の痛みも減ってきて、肩の動きも良くなることが期待できます。

つまり、通常の治療よりも早く炎症が治まり、リハビリが早く進み、つらい期間が短くなるのです。

論文で証明されているの?

血管に塞栓物質を入れて本当に大丈夫なの?と疑問が出てきますが、数多くの論文で安全性は証明されています(炎症だけ都合よく減ってますという論文:川崎医科大の)。私が使っている塞栓物質は一時的な塞栓物質で元々抗生剤として20年ほど前から数多く使用されてきた抗生剤(チエナム)を使用しており、これまで五十肩の治療において永久的な合併症は聞いたことがありません。

世界中の痛みのカテーテル治療がどんどん論文となって出てきており、痛みや可動域が明らかに改善した結果となっています。下記に一部だけご紹介します。

スペインの研究(2024年)
従来の治療で良くならなかった20人(平均50歳、約9か月痛みが続き3か月はリハビリをした人たち)にカテーテル治療を行い、夜間痛や動作時痛は大幅に有意に改善し、6か月後にも効果は持続していました。

韓国の研究(2024年)
25人に同じ治療を行い、3か月後には大幅に有意に痛みが減っており、MRIでも炎症が減ったことが確認されました。

左肩のモヤモヤ血管のビフォーアフター(奥野先生の論文より)

日本の研究(2022年)
日本国内の5つの病院で、従来の治療で効果がなかった人100人(五十肩76人・腱板断裂24人)を対象に実施。6か月後には痛みのスコアが「6.4 → 1.6」に改善し、肩の動きや生活の質も向上しました。

奥野先生が始められた治療方法なので、日本での症例数は世界と比較しても多いですね。また、腱板断裂の痛みも五十肩のカテーテル治療の改善度と同じ程度良いと示されています。

後ろ向きの研究が多く、現在複数のランダム化比較試験が計画されていますので、今後の研究報告も要チェックですね。
なお、これらの論文で重大な合併症はなく、一時的な皮膚の発赤や内出血が数人あったと報告があります。安全性もとても高く日帰りでとても良いですね。

実際の患者さんの声

私の外来でも、夜の痛みで寝られなかった方が治療後に「ぐっすり眠れるようになった!」と、とても喜んでくれています。
また、カテーテル治療は血管の中から炎症を減らすので、湿布や注射と一緒に使うとさらに効果が高く、リハビリの先生たちからも「回復が早くリハビリが進みます!」と言われます。

身近にも五十肩の人が?

実は私の母も五十肩で夜間痛や運転時の痛みで困っていたため、昨年ながさきハートクリニックでカテーテル治療を行いました。炎症血管が多くあり、とてもステロイド注射や安静だけでは痛みが減るとは思えないモヤモヤ具合でした。カテーテル治療で1か月で痛みは半減以下となり、2か月でほぼ痛みは消失して快適に過ごしています。痛いときは会うたびに痛い痛いと言っており、本人も周りも気持ちが滅入ってしまう状況でしたが、今は元気に過ごせるようになってよかったです。(下記は2025年九州トランスラディアル研究会のランチョンセミナーでの発表スライドの一部です)

 

その他、私が治療した治療実例も下記に記載しています。長引く痛みでお困りの方に痛みのカテーテル治療が今後当たり前のように選択肢の一つとして存在するようになると確信しています。

年以上の右肩痛と右指の痺れカテーテル治療が奏功した1例(院長がながさきハートクリニックにて施行)

今後しばらくは私の活動とこのような真面目な論文紹介を交互にブログに書いていこうかと思っています!次回もお楽しみに!

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痛みのカテーテル治療の副作用(リスク)

① カテーテル挿入部位の内出血(約4%)

② 造影剤や薬剤による蕁麻疹などのアレルギー反応(約2%)

③ 治療部位の一時的な疼痛の増加(約5%)

※いずれも数日から数週間で消退

※これまでに皮膚壊死や生命を脅かすような重大な副作用の報告はありません

※カテーテル治療は自費診療であり、標準価格は1部位税込み30.8万円です

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