TFCC損傷とは

TFCC（Triangular Fibrocartilage Complex,三角線維軟骨複合体）は、手首（手関節）の小指側にある軟骨や靱帯の複合体で、手首の安定性を保ち、衝撃を吸収する役割を持つ組織です。
TFCC損傷は、この組織が過度の負荷や加齢、外傷などによって損傷を受けることで痛みや手首の不安定感を引き起こす疾患です。

TFCC損傷は、スポーツ選手や重量物を扱う仕事をする人に多く発生し、手首を捻る動作や強く握る動作で痛みが悪化します。
放置すると手首の可動域が制限され、日常生活に支障をきたすことがあります。

主な症状

手首の小指側の痛み

物を握る、ドアノブを回す、手首を捻る動作で痛みが出る。

進行すると、安静時でも痛みが続くことがある。

手首の不安定感

手首を動かしたときにぐらつく感じがする。

手首のクリック音や違和感

手首を動かした際に「パキッ」という音がすることがある。

可動域の制限

手首を十分に曲げたり回したりできなくなる。

握力の低下

物を強く握る動作が困難になり、握力が低下する。

主な原因

手首の過度な負荷

スポーツ（テニス、ゴルフ、野球など）や重量物を持つ作業で手首に過度な負荷がかかる。

転倒や外傷

手をついたときの衝撃でTFCCが損傷することがある。

加齢による変性

加齢によりTFCCの組織が弱くなり、損傷しやすくなる。

手首の捻りすぎ

手首を過度に捻る動作の繰り返しがTFCCに負担をかける。

関節の不安定性や骨の形態異常

先天的な骨の形態異常や手首の靭帯の緩さが影響することもある。

一般的な治療法

RICE処置（安静・冷却・圧迫・挙上）

損傷直後は安静にし、氷で冷やして腫れを抑える。

圧迫（テーピングやサポーター）と挙上（心臓より高くする）で炎症を軽減。

装具療法（サポーター・テーピング）

手首の負担を軽減し、安定させるための装具を装着。

理学療法（ストレッチ・リハビリ）

可動域を回復させるため、手首のストレッチや筋力強化トレーニングを行う。

薬物療法（鎮痛剤・抗炎症薬）

非ステロイド性抗炎症薬（NSAIDs）を使用し、炎症と痛みを軽減。

ステロイド注射

痛みが強い場合、炎症を抑えるために関節内にステロイドを注射。

手術（重度の場合）

痛みが長期間続く場合や関節の不安定性が強い場合、関節鏡視下手術（TFCCの修復・切除）が検討される。

自分でできる対処法

手首を安静にする

痛みが強い場合は無理に動かさず、負担を減らす。

アイシング（冷却）

炎症を抑えるため、1回20分程度の冷却を1日に数回行う。

ストレッチ・筋力強化

痛みが落ち着いたら、手首周囲の筋肉を鍛えるリハビリを行う。

サポーターの使用

手首への負担を減らし、安定させるためにサポーターを使用。

正しい動作の習得

スポーツや日常動作で手首に過度な負担がかからないように工夫する。

血管内治療（カテーテル治療）

慢性化したTFCC損傷の痛みには、異常な新生血管（モヤモヤ血管）が形成され、これが痛みを持続させる原因 となっていることがあります。
血管内治療（カテーテル治療）は、これらの異常血管を閉塞し、痛みを軽減する最新の治療法です。

血管内治療の効果

• 炎症の抑制 ：異常血管を遮断することで、炎症が収まり痛みが軽減する。
• 血流の正常化 ：血流が適正に保たれることで、組織の修復が促進される。
• 長期的な改善が期待できる ：根本的な原因にアプローチすることで、持続的な症状の改善が可能。

血管内治療は、従来の治療法で改善が見られなかった慢性的なTFCC損傷の患者にとって、新たな選択肢となる治療法です。軽症の場合は動注治療も選択肢となります。