石灰沈着腱板炎とは

石灰沈着腱板炎は、肩関節の腱板内にカルシウム（石灰）が沈着し、炎症を引き起こす疾患 です。急激な激痛を伴うことが多く、特に40〜50代の女性に多く見られます。

通常、腱板の一部にカルシウムが蓄積しても症状が現れないことがありますが、沈着した石灰が炎症を引き起こしたり、吸収される過程で急激な痛みが生じることがある ため、発症すると強い痛みと可動域の制限がみられます。

発症すると夜間痛が強くなり、腕を動かすことが困難になることもあります。適切な治療を行えば自然に改善することもありますが、痛みが強い場合や再発を繰り返す場合には、治療が必要 となります。

主な症状

急激な肩の激痛

ある日突然、耐え難い強い痛みが発生する。

特に夜間に痛みが増し、睡眠が妨げられる。

肩の可動域制限

肩を動かそうとすると強い痛みが走る。

痛みのために腕を上げることが困難になる。

腫れや熱感

炎症が強い場合、肩の周囲に腫れや熱を伴うことがある。

慢性的な違和感や軽い痛み（慢性期）

激しい痛みが治まった後も、肩に違和感や軽い痛みが残ることがある。

主な原因

カルシウムの沈着

腱板内にカルシウムが蓄積することで発症する。

血流の低下

腱板への血流が低下すると、石灰の沈着が起こりやすくなる。

加齢による組織の変性

腱の老化により、カルシウムが蓄積しやすくなる。

ホルモンバランスの影響

女性ホルモンの変化が影響している可能性が指摘されている。

肩の使いすぎ

肩を酷使することで、腱板に負担がかかり、石灰沈着を引き起こす。

一般的な治療法

薬物療法（消炎鎮痛剤）

非ステロイド性抗炎症薬（NSAIDs）を使用し、炎症と痛みを軽減。

ステロイド注射

強い炎症を抑えるために関節内にステロイドを注射することがある。

理学療法（ストレッチ・リハビリ）

可動域を回復させるため、痛みが和らいだ後にストレッチを行う。

体外衝撃波療法（ESWT）

衝撃波を当てることで石灰を砕き、吸収を促進する治療法。

関節鏡視下手術

重症例では関節鏡を用いて直接石灰を取り除く手術が行われることもある。

自分でできる対処法

痛みが強いときは安静にする

痛みが強い間は無理に動かさず、肩を休ませる。

アイシング（冷却）

急性期の炎症を抑えるため、氷や冷却パックを使って冷やす。

温める（慢性期）

慢性化した場合は、血流を促進するために温める。

軽いストレッチ

痛みが落ち着いたら、軽いストレッチを行い、肩の可動域を回復させる。

肩への負担を減らす生活習慣を意識する

重いものを持つ動作を避け、肩の負担を減らす。

血管内治療（カテーテル治療）

石灰沈着腱板炎の痛みは、異常な新生血管（モヤモヤ血管）が形成されることが関与している場合があり、これが痛みを持続させる原因 となることがあります。血管内治療（カテーテル治療）は、これらの異常血管を閉塞することで痛みを軽減する最新の治療法です。

血管内治療の効果

• 炎症の抑制 ：異常血管を遮断することで、炎症が収まり痛みが軽減する。
• 神経の過敏性を抑える ：痛みを伝達する神経との相互作用を遮断し、慢性的な痛みを和らげる。
• 血流の正常化 ：血流が適正に保たれることで、腱板の修復が促進される。
• 長期的な改善が期待できる ：根本的な原因にアプローチすることで、持続的な症状の改善が可能。

特徴

• 低侵襲 ：カテーテルを使用するため、体への負担が少ない。
• 即日退院可能 ：治療後すぐに日常生活に戻れる。
• ピンポイントで治療 ：異常血管を特定し、局所的に治療を行う。
• 再発防止効果が期待できる ：炎症を抑えることで、痛みの再発を予防。

血管内治療は、従来の治療法で改善が見られなかった慢性的な石灰沈着腱板炎の患者にとって、新たな選択肢 となる治療法です。