仙腸関節炎
仙腸関節炎とは
仙腸関節炎は、骨盤の仙腸関節(仙骨と腸骨のつなぎ目)に炎症が生じ、腰や臀部の痛みを引き起こす疾患 です。仙腸関節は、体重を支え、上半身と下半身をつなぐ重要な関節であり、炎症が起こると歩行や座位、立ち上がる動作で強い痛みを感じることがあります。
この疾患は姿勢の崩れ、過度な運動、出産後の骨盤の歪み、関節リウマチなどが原因となることが多い です。症状が悪化すると、慢性的な痛みによって生活の質が低下する可能性があります。
主な症状
腰や臀部の痛み
片側、または両側の臀部に鈍い痛みを感じる。
歩行や階段の昇降で痛みが悪化。
長時間の座位や立位での痛み
座り続けたり、立ちっぱなしの状態が続くと痛みが強くなる。
動作時のこわばりや痛み
朝起きたときや長時間同じ姿勢を取った後にこわばりを感じる。
股関節や太ももへの放散痛
仙腸関節の痛みが股関節や太ももの後ろ側まで広がることがある。
骨盤の不安定感
骨盤がグラグラする感じがあり、歩行時に違和感を覚える。
主な原因
姿勢の悪化や骨盤の歪み
猫背や反り腰など、骨盤のバランスが崩れることで関節に負担がかかる。
出産後の骨盤の不安定性
出産時のホルモン変化や骨盤のゆるみにより、仙腸関節が炎症を起こしやすくなる。
過度な運動や負荷
ランニングやジャンプ動作の多いスポーツで仙腸関節にストレスがかかる。
関節リウマチや脊椎関節炎
自己免疫疾患による炎症が仙腸関節に影響することがある。
外傷や繰り返しのストレス
転倒や交通事故による衝撃、または長期間の負荷が影響することがある。
一般的な治療法
薬物療法(鎮痛剤・抗炎症薬)
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を使用し、炎症と痛みを軽減。
理学療法(ストレッチ・リハビリ)
骨盤周囲の筋肉を強化し、関節の安定性を向上させる。
装具療法(骨盤ベルト)
骨盤の安定性を保つために、仙腸関節を支える骨盤ベルトを使用。
仙腸関節ブロック注射
ステロイドや局所麻酔薬を関節内に注射し、炎症を抑える。
手術(重度の場合)
保存療法で改善しない場合、関節固定術を行うことがある。
自分でできる対処法
姿勢を改善する
長時間の座位を避け、適度に体を動かす。
正しい姿勢を意識し、腰や骨盤に負担をかけないようにする。
ストレッチと体幹トレーニング
骨盤周囲の柔軟性を高めるストレッチを行う。
腹筋や背筋を強化し、仙腸関節の安定性を高める。
温熱療法を活用する
温湿布や入浴で血流を促し、筋肉の緊張を和らげる。
アイシング(急性期)
急な痛みが出た場合は、炎症を抑えるために氷で冷やす。
適切な寝具を使用する
腰をサポートするマットレスや枕を選び、睡眠時の負担を軽減。
血管内治療(カテーテル治療)
慢性化した仙腸関節炎の痛みには、異常な新生血管(モヤモヤ血管)が関与していることがあり、これが痛みを持続させる原因 となっています。血管内治療(カテーテル治療)は、これらの異常血管を閉塞し、痛みを軽減する最新の治療法です。
血管内治療の効果
炎症の抑制 :異常血管を遮断することで、炎症が収まり痛みが軽減する。
血流の正常化 :血流が適正に保たれることで、組織の修復が促進される。
長期的な改善が期待できる :根本的な原因にアプローチすることで、持続的な症状の改善が可能。
特徴
低侵襲 :カテーテルを使用するため、体への負担が少ない。
即日帰宅可能 :治療後すぐに日常生活に戻れる。
ピンポイントで治療 :異常血管を特定し、局所的に治療を行う。
再発防止効果が期待できる :炎症を抑えることで、痛みの再発を予防。
血管内治療は、従来の治療法で改善が見られなかった慢性的な仙腸関節炎の患者にとって、新たな選択肢 となる治療法です。治療前の診断には造影MRIが必要なこともあります。