料理やバイクの運転がつらかった母指CM関節症の痛みに動注治療を行った症例
症例概要
約1年前から続く左手親指の付け根(母指CM関節)の痛みと腫れに対し、ながさきハートクリニック(長崎市)で動注治療を行った50代女性の症例です。整形外科での注射では痛みが1週間ほどでぶり返していましたが、動注治療を2回実施し、初診時を10とした痛みは1まで軽減。料理やバイクの運転といった日常動作の支障が改善しました。
初診時の状態
約1年前から、左手親指の付け根に痛みと腫れが続いていました。痛みの強さはNRS(痛みを0〜10で表す指標)で7〜9。フライパンを持つなどの料理の動作や、バイクの運転で特に痛みが強く、じっとしているときにも痛むことがある状態でした。
整形外科で関節への注射を2回受けましたが、いずれも1週間ほどで痛みがぶり返していました。
当院初診時の診察では、母指CM関節に一致した圧痛を認め、超音波(エコー)検査では関節周囲の強い滑膜肥厚を認めました。
診断と治療方針
母指CM関節症では、炎症が長引いて滑膜が厚くなった部位に、痛みの原因となる異常な血管(モヤモヤ血管)が増えていることが少なくありません。注射で一時的に痛みが軽くなってもすぐにぶり返す場合、この異常な血管が残っていることが痛みの持続に関与していると考えられます。
本症例では、罹病期間が約1年と長く、エコーで強い滑膜肥厚を認めたことから、異常な血管を標的とする動注治療の適応と判断しました。手指の痛みは動注治療の対象部位であり、外来で短時間に実施できることも踏まえて本治療を選択しています。
治療内容(動注治療)
動注治療は、手首の動脈から薬剤を注入し、痛みの原因となる異常な血管(モヤモヤ血管)を減らすことを目的とした注射による治療です。外来で実施し、所要時間は約3分。麻酔は不要で、治療当日から通常の生活が可能です。
本症例では初診当日に1回目の動注治療を実施し、その後も経過を見ながら約6週間後、約3ヶ月後に追加し、計3回行いました。
治療後の経過
| 時期 | 痛みの程度 (初診時=10) |
状態 |
|---|---|---|
| 初診時 | 10 (NRS 7〜9) |
料理・バイク運転で強い痛み。安静時痛あり。圧痛・強い滑膜肥厚。1回目の動注治療を実施。 |
| 約6週間後 | 3 | 夜間の痛みが消失。料理やフライパンを持つ動作は問題なし。バイクでハンドルをひねる動作やブレーキ操作時に痛みが残存。2回目の動注治療を実施。 |
| 約3ヶ月後 | 1 | 圧痛が消失。残った痛みに対し、本人と協議のうえ仕上げとして3回目の動注治療を実施し、治療を終了。 |
担当医コメント
坂井 伸彰(福岡ペインケアクリニック 院長/ながさきハートクリニック)
日本専門医機構認定内科専門医。異常な血管(モヤモヤ血管)を標的とした痛みの血管内治療を専門とし、国内外の学会で発表を行っています。
母指CM関節症は、注射やサポーターで一時的に改善しても痛みがぶり返しやすい疾患です。特にエコーで滑膜肥厚を認める場合には、異常な血管が痛みの持続に関与していることが多く、そこを標的とした動注治療が有効な選択肢となります。動注治療は約3分・麻酔不要で外来にて実施でき、本症例のように経過を見ながら複数回に分けて行うことも可能です。手指の痛みで注射を繰り返しても改善が続かない場合は、一度ご相談ください。
費用・リスクについて
動注治療(手): 片側25,300円/両側36,300円(税込・1回あたり)。本症例では計3回実施しました。料金の詳細は料金表をご覧ください。
主なリスク・副作用
- 注射部位の内出血(約4%)
- アレルギー反応(約2%)
- 一時的な痛みの増加(約5%)
※いずれも数日〜数週間で改善します。皮膚壊死などの重篤な合併症の報告はありません(当院実績)。
※ 本記事は当院で実施した治療の一例をご紹介するものであり、すべての方に同様の経過を保証するものではありません。治療の適応や効果には個人差があります。
※ 動注治療・カテーテル治療は自由診療(保険適用外)です。医療費控除の対象となる場合があります。
親指の付け根の痛み、注射を繰り返しても改善しない方へ
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