ゴルフ中に左肘滑膜炎を発症し、カテーテル治療を行い手術を回避した一例
70代男性が、ゴルフ中に発症した左肘滑膜炎に対し、整形外科での加療(複数回の関節穿刺)を受けるも痛みと腫れが残存し「手術しかない」と告げられた状態で、福岡ペインケアクリニック(福岡市)でのカテーテル治療を希望し、ながさきハートクリニック(長崎市)にて精査ののち加療を行った症例です。カテーテル治療1回・動注治療3回・コンディショニング(運動療法)を組み合わせた結果、初診時NRS8(10段階)から約5ヶ月後にはNRS1へと軽減を認め、手術を回避できた一例です。
患者情報
| 年代・性別 | 50代・男性 |
|---|---|
| 主訴 | 左肘の痛みと腫れ(屈曲・伸展・回内外時の疼痛増強) |
| 診断 | 左肘滑膜炎(水腫合併) |
| 罹病期間 | 約1年3ヶ月 |
| 初診時の痛み | NRS 8 / 10(0=痛みなし〜10=想像しうる最大の痛み) |
| これまでの治療 | 整形外科にてMRI撮像・複数回の関節穿刺(水抜き)を施行するも、痛みと腫れの改善乏しく、「手術しかない」と告知されていた |
| 実施した治療 | 動注治療・カテーテル治療〈経動脈的微細血管塞栓術〉 4回 |
来院までの経緯
発症はゴルフのプレー中であった。突然左肘に痛みが出現し、受診した整形外科ではMRI検査が施行され、細菌性滑膜炎の疑いと診断された。その後、複数回にわたる関節穿刺(関節液の吸引)が行われたが、痛みと腫れは残存し続けた。発症から約1年3ヶ月が経過した時点で担当医から「手術しかない」と告知されたが、患者本人は手術を希望せず、低侵襲治療を求めて来院した。
日常生活においては、瓶の蓋を開ける動作や重い荷物を持つ掃除などの家事動作に支障を認め、仕事や日常生活においてもわずかな制限が継続していた。また、チクチクとした神経障害性疼痛様の症状も中程度認めていた。ゴルフは月2回のコースラウンドおよび週2〜3回の練習を継続していたものの、肘の屈曲・伸展・回内外動作にて痛みが増強する状態であった。
診察と診断
初診時の診察では、左肘外側に軽度の圧痛を認め、屈曲時に肘後方の疼痛増強を確認した。超音波(エコー)検査では滑膜炎像および水腫が確認された。肘外反ストレステストでは陽性所見を認め、肘の外反・前腕回外動作にて痛みが増強した。屈曲・伸展・回内外のいずれにおいても可動域制限が存在した。
エコー所見と臨床所見を総合し、左肘滑膜炎(水腫合併)と診断した。異常な血管新生(モヤモヤ血管)への対処が必要と判断し、カテーテル治療(TAME法)と局所への薬剤動注治療の組み合わせ、およびコンディショニング(運動療法)の併用方針とした。なお、カテーテル治療前に画像検査にて他疾患の除外を行った。
治療内容
カテーテル治療は、手首または足の付け根の動脈から極細のカテーテルを進め、痛みの原因となる異常な血管(モヤモヤ血管)を選択的に塞栓する日帰りの治療です。局所麻酔で行い、所要時間は約40〜60分です。
初診時のエコー検査では肘関節に滑膜炎および水腫が確認された。MRIによる精査ののち、カテーテル治療(TAME)を実施した。手首の動脈から極細カテーテルを挿入し、肘周囲の複数の栄養血管に形成された異常な新生血管(モヤモヤ血管)を確認したところ、いずれも著明な濃染像を呈しており、滑膜炎の活動性が高い状態であった。各血管に対して選択的塞栓を行い、治療時間は約40〜60分であった。局所麻酔下・日帰りで施行した。
カテーテル治療の約1ヶ月後より、コンディショニング(運動療法)を開始した。初回評価では肘関節の屈曲・伸展および前腕回内外の可動域制限が確認され、肘外反ストレステストも陽性であった。肘関節可動域訓練、前腕筋のストレッチ、前腕掌背屈・回内外の筋力トレーニングを実施するとともに、自宅での自主練習(前腕回内外自動運動・軽負荷での前腕掌背屈筋力訓練 各10回×2〜3セット)を処方した。コンディショニングは計4回実施した。動注治療(外来・麻酔不要・約3分)はカテーテル治療後追加で計3回施行し、いずれもカテーテル治療後の肘周囲へ行った。初回動注(カテーテル治療後約2ヶ月)および2回目動注(同約3ヶ月後)を経て腫れの明らかな軽減を確認し、3回目動注(同約3ヶ月後)施行後は滑膜付近の水腫がさらに軽減した。
治療後の経過
痛みの変化(初診時の痛みを10とした場合・患者申告)
※ 数値は本症例における患者申告値です。効果には個人差があります。
コンディショニングでは肘関節可動域の拡大が徐々に得られ、前腕回内外および掌背屈の筋力訓練を継続した。伸展制限については治療終了時点で一部残存が確認されており、引き続き自主練習による改善を目指す経過となった。ゴルフについては、コンディショニング開始の約1ヶ月後の時点でコースへの復帰が確認されている。
担当医コメント
本治療について(自由診療に関する事項)
- 治療名
- カテーテル治療〈経動脈的微細血管塞栓術〉/動注治療
- 保険適用
- 本治療は自由診療(保険適用外)です。
- 費用の目安
- カテーテル治療 288,600〜440,000円(税込)
動注治療 25,300〜41,800円(税込)
※いずれも部位・片側/両側により異なります。詳細は料金表をご確認ください。 - 標準的な回数・期間
- カテーテル治療は多くの場合は1回で、症状に応じて追加治療(注射や動注治療)を検討します。
動注治療は2〜3回程度です。 - 主なリスク・副作用
- 穿刺部の内出血・皮下血腫、一時的な痛みの増強や皮膚の色調変化、感染、造影剤・薬剤に対するアレルギー反応などが生じる場合があります。
- 効果について
- 掲載内容は当院で実際に行った治療の一例です。効果には個人差があり、すべての方に同様の結果を保証するものではありません。適応の可否は診察のうえ個別に判断いたします。
この記事の監修
坂井 伸彰 / 福岡ペインケアクリニック 院長・ながさきハートクリニック
運動器カテーテル治療(MSK-IVR)を専門とし、国内外の学会で発表・論文報告を行う。痛みの血管内治療の実績は2,500例を超える。
院長の経歴・学術実績を見る →「自分の痛みは対象になる?」まずは相談だけでも(LINE相談は無料)
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本ページは当院で実際に行った治療の一例であり、効果には個人差があります。すべての方に同様の結果を保証するものではありません。カテーテル治療(288,600〜440,000円・税込)・動注治療(25,300〜41,800円・税込)は自由診療(保険適用外)で、費用はいずれも部位・片側/両側により異なります。詳細は料金表をご確認ください。治療には穿刺部の内出血・皮下血腫、一時的な痛みの増強、感染、造影剤・薬剤に対するアレルギー反応等のリスクを伴う場合があり、適応の可否は診察のうえ個別に判断いたします。
よくあるご質問
九州ペインケアネットワーク
Kyushu PainCare Network
福岡ペインケアクリニックと、ながさきハートクリニックは、
モヤモヤ血管治療が受けられるクリニックで、同水準の治療とサポート体制を提供しています。



DOCTOR'S COMMENT
本症例は、ゴルフ動作を契機に発症した肘滑膜炎に対し、整形外科での繰り返しの関節穿刺でも改善が乏しく、手術を勧められた状態でご来院いただいた一例です。カテーテル治療(TAME法)にて滑膜を栄養する複数の異常血管に著明な濃染を確認しており、炎症の根本に血管新生が深く関与していたと考えられます。カテーテル治療で血流を遮断したうえで動注治療を3回組み合わせ、並行してコンディショニングで関節可動域と筋力の回復を図ったことが、約5ヶ月でのNRS1への軽減につながったと考えています。滑膜炎は繰り返しの穿刺・排液のみでは炎症の根本にアプローチできないケースがあり、異常血管へのアプローチが有効な選択肢となりえます。「手術しかない」と言われた段階でもあきらめずにご相談いただければ、治療の選択肢をご提示できる場合があります。