【論文紹介】つらい腰痛への新治療!カテーテル治療で痛み大幅に減少
【腰の関節が原因の痛み、「椎間関節性腰痛」とは?】
腰の骨の後ろ側には、背骨どうしをつなぐ「椎間関節(ついかんかんせつ)」という小さな関節があります。年齢とともにこの関節がすり減ったり炎症を起こしたりすると、腰にズーンとした痛みが出ることがあります。これを「椎間関節性腰痛」といいます。
【従来の治療では治らない…そんな時に】
多くの場合、この腰痛にはリハビリや痛み止めの薬、神経ブロック注射などが使われます。しかし、中にはそれでも良くならない方もいます。
そこで注目されているのが、カテーテルを使った血管内治療です。
【新しい腰痛の治療法「カテーテル治療」って?】
今回ご紹介するのは、2021年に藤原圭史先生らより発表された前向き研究で、カテーテルを使った椎間関節性腰痛に対するカテーテル治療(Transcatheter Arterial Embolization)について調べたものです。
この治療では、細い管(カテーテル)を使って、痛みに関係する血管に薬を届けて炎症血管(モヤモヤ血管)を減らします。それにより、痛みの改善が期待できます。
【研究の内容と結果】
この研究では、46人の腰痛患者さんにカテーテル治療を行いました。
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対象:リハビリや神経ブロックで改善しなかった慢性的な椎間関節性腰痛
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方法:カテーテルでL2-4の椎間関節まわりの血管にチエナム(一時的塞栓物質)を投与
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結果:治療から1年後、約8割の人が痛みの改善を実感
左は治療前(モヤモヤ血管)、右は治療直後(論文より)
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痛みの数値(BPI):3か月後には平均6.1 → 2.8 へ有意に大きく減少
- 鎮痛薬使用:3か月後オピオイド8人→2人、NSAIDs(ロキソニンなど)8人→1人に減少
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合併症:重い副作用なし
【この治療が向いている人は?】
以下のような方に適しています:
- 腰の関節の痛みが長引いている
- 朝や動き出しが痛い
- 薬や注射で改善しなかった
- 手術は避けたい、もっと体に負担の少ない方法を探している
【当院での治療実例】
腰痛で多くの方が治療を受けています。
実際に腰痛へカテーテル治療をした実例やYoutube動画をリンク先からご参照ください。
私の父親の治療実例も掲載しています。
【まとめ】
論文の成績を見ると、保存療法でも痛みが減らない人の中で8割近くの方が痛みの改善を認めているのはとてもいい成績だと思います。
実際に多くの腰痛のカテーテル治療をしていますが、喜ばれる方が多いのは実感しています。
カテーテル治療は、慢性的な椎間関節性腰痛に対して、新しい選択肢となる可能性があります。体への負担が少なく、回復も早いことが多いため、従来の治療で効果がなかった方にも希望の持てる方法です。
福岡ペインケアクリニックとながさきハートクリニックには、九州各県から多くの痛みでお困りの方が治療を受けに来院されます。長引く腰痛でお困りの方はお気軽にご相談ください。
【参考文献】
Keishi Fujiwara et al.
"Transcatheter arterial embolization for facet joint–related chronic low back pain: a prospective multicenter, open-label single-arm clinical trial"
Cardiovascular and Interventional Radiology, 2021.
