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変形性膝関節症の新しい治療法を比較|PRP注射・クーリーフ・ラジオ波・カテーテル治療の特徴と効果

[2025.10.30]

膝の痛み、あきらめていませんか? この記事では、手術以外の最新治療5つを比較し、それぞれの効果や特徴を痛み治療専門としている医師の視点でわかりやすく解説します。

最近、変形性膝関節症の治療分野において、新治療が続々と出てきています。

『PRP注射』や『クーリーフ』、『ラジオ高周波』『痛みのカテーテル治療』『幹細胞上清液(エクソソーム)注射』など、皆さんも聞いたことがあるかもしれません。

今回は、これらの変形性膝関節症の新治療について、良いところ悪いところ、治療成績などをまとめていこうと思います。

 

①PRP注射(多血小板血漿注射)

仕組みと特徴

患者自身の血液を採取し遠心分離して多血小板血漿(PRP)を抽出し、それを患部の関節内に注射する治療です。血小板には組織修復を促進するサイトカインや成長因子が豊富に含まれており、これを膝関節へ注入することで関節内の炎症の抑制を図ります。カテゴリー的には再生医療と言われることも多いですが、実際に軟骨組織は再生することはないため、厳密には再生医療ではありません。

FD-PRP(フリーズドライPRP)とは、PRPからさらに血小板濃縮因子やサイトカインを抽出し、均質に製剤化することで、治療の再現性・持続性・濃度を高める狙いがあります。

難治性の膝痛やスポーツ外傷、関節リウマチ初期に良い適応です

メリット

自分の血液由来のため重篤な副作用がほとんどない安全な治療です。また、外来で注射のみ、日帰りで切らない治療です。

デメリット

軟骨のすり減りが高度であったり肥満体型の方は効果が出にくいという報告です。順天堂医院の研究では、約500例のPRP治療で効果ありと判断されたのは約60%に留まり、約40%は痛みの十分な改善が見られませんでした。2025年現在、PRP治療は自費治療です。

有効性

Bensaら(2025年, Am J Sports Med)のメタ分析では、変形性膝関節症患者に対するPRP関節内注射はプラセボ(生理食塩水注射)に比べて有意に疼痛と機能を改善しました。一方で、PRPの効果持続期間や最適な投与方法については研究間でばらつきもあり、ヒアルロン酸注射との比較では中期的な優位性が報告されつつも統一した見解には至っていません。

Xie et al., 2021International Journal of Surgery)の研究では、30件のRCT(2781人)の分析で、PRP治療が3か月後にVAS-10.20mm、6か月後にVAS-13.01mm、12か月後にVAS-11.15mmの改善が見られています。

VASというのは0から100までの直線(または0〜10)上で、患者自身が「今感じている痛みの強さ」を示します。一般的にはVAS-20mmまたは痛み半分以下で臨床的な意味のある改善とされていますので、PRP治療の成績としてはもう少し欲しいところです。

 

②ラジオ波焼灼術(高周波熱凝固術:RFA) 

従来型の高周波熱凝固術(RFA)です。基本的な原理はクーリーフと同じく、膝関節包や靭帯を支配する膝周囲の知覚神経を高周波電流で焼灼し、痛みの伝達経路を遮断することです。従来型RFAでは通常の未冷却電極プローブを用いるため熱凝固できる範囲が比較的局所的で、的確に神経近傍へプローブ先端を位置決めする技術が要求されます。ペインクリニック領域でクーリーフ導入前から一部施行されてきました。

メリット

切開を伴わない低侵襲な痛み緩和療法です。薬物療法や関節注射では痛みが治まらず手術には踏み切れないような症例に対し、痛みを数か月以上コントロールして生活の質を向上させる効果が期待できます。

デメリット

クーリーフに比べると熱凝固できる範囲が限定的であり、痛みの原因神経を十分カバーできない場合があります。このため効果の持続期間が6か月未満と報告されるケースもあり、再施行の頻度が上がる可能性があります。また、本邦では保険収載されていますが、材料費が高く、治療すればするほど実施施設の負担となるため、膝に対してRFAを行う施設は自費診療で行っていることが多いです。

有効性

 Choiら(2011年, Pain)の二重盲検RCTによると、重度膝OA患者38名を対象に、実際に膝神経を焼灼する群と疑似処置群にランダム割付したところ、RFA群は処置後4週および12週で対照群より疼痛スコアが有意に低下し、膝機能スコアも改善しました。特にRFA群の約59%が12週後に痛みが50%以上軽減し、対照群(疑似焼灼)ではそのような改善は皆無でした。クーリーフとの比較では、両者とも痛み・機能を有意に改善する一方、冷却型の方が効果持続期間で勝る可能性が示唆されています。

 

③クーリーフ(Coolief:冷却型ラジオ波焼灼術) 

仕組みと特徴:クーリーフは膝関節痛の緩和を目的とした「冷却型高周波焼灼術(CRFA)」です。超音波やX線透視で位置確認しながら膝周囲の痛み伝導を担う複数の感覚神経(脛骨神経の下内側膝神経、大腿神経の上内側膝神経、総腓骨神経の上外側膝神経など)付近に電極を挿入し、高周波(約60~80℃)で神経を熱変性させ痛みの信号をブロックします。クーリーフの機器は水冷システムを備えておりプローブ先端を冷却できるため、従来型RFAより広範囲の組織に熱を伝え、狙った神経領域を効率よく処理できるのが特徴です。

メリット

皮膚に針を刺す程度の低侵襲な手技であり、入院不要の外来治療として実施できます。痛みの軽減効果が大きく、持続期間も半年~1年程度と報告されています。

米国FDAでは変形性膝関節症の痛み管理として唯一承認されたRFA治療で、本邦でも2023年から保険適応となっています。

デメリット

関節の変形そのものを治療するわけではありません。時間とともに神経は再生して痛みが再発する可能性があり、炎症が強いタイプは効果が出ないこともあります。効果が切れれば再施術が必要となるケースもあります。実施施設が非常に限られています。

有効性

Davisら(2018年, Reg Anesth Pain Med)による多施設RCTでは、CRFA(Coolief)治療群の74%の患者が6か月後に疼痛が50%以上軽減し、対照のステロイド関節内注射群の16%を大きく上回りました。その後の追跡研究では痛み軽減効果は平均6か月~1年間持続し、12か月後でも約65%の患者が痛み50%以上の改善を維持したとの結果がありますが、2年経つと痛みを感じる神経が修復されてきてぶり返すこともあります。

 

④痛みのカテーテル治療(GAE:膝動脈塞栓術)

経カテーテル微細動脈塞栓術(TAME)と言われていますが、海外での膝動脈の塞栓術はGAE(Genicular Artery Embolization)という略語で広まっています。膝の痛みの原因となる異常な血管へカテーテルを用いて塞栓物質を投与する治療です。

変形性ひざ関節症(OA)は単なる「すり減り」ではなく、「血管新生・炎症・神経過敏」が関与する複雑な病態です。新生血管が炎症物質を運び、痛みの悪循環が続いているため、それを断ち切ることが重要です。

メリット

極細カテーテルを使用するため、1mm程度の傷口で低侵襲です。痛みの長期抑制効果の報告が多々あり、ヒアルロン酸やステロイド注射に比べ再発率が低いとのデータもあります。国では2022年にFDAが先進医療として認可され、保険適応となっため世界中で爆発的に治療件数が増えています。

デメリット

カテーテル操作に高度な専門技術と知識を要する治療であり、実施している医師と施設は極わずかで、九州では福岡ペインケアクリニックとながさきハートクリニック、オクノクリニックの3施設しかありません。合併症として一時的な皮膚の色調変化や、カテーテル挿入部の内出血が挙げられますが、重篤な合併症や組織壊死の報告はありません。

また、ドイツやアメリカでは保険治療としてカテーテル治療がなされていますが、本邦ではまだ自費診療扱いです。

有効性

Taslakianら(2023年, Osteoarthritis and Cartilage Open)の系統的レビュー/メタ解析では9研究・計337膝の集計から、GAE施行後12か月時点でVAS(痛みスケール)が平均36ポイント改善、WOMAC(膝機能)総スコアも34ポイント改善していました。VASの低下幅はPRP治療の2倍以上でした。2年以内の再治療率は8.3%と、人工膝関節置換術後2年以内の再手術率5.2%と大きな差はありませんでした。

米UCLAの研究(2024年)では平均年齢66歳の膝OA患者40膝を対象にGAE施行し2年間追跡した結果、痛みが平均55%軽減し、72%の症例で24か月後も痛みが半分以下に抑えられたと報告されています。

⑤幹細胞上清液(エクソソーム)注射

最近、幹細胞を培養する際に出てくる上澄み液に、抗炎症因子・サイトカインが多く含まれており、その上澄み液を点滴や点鼻、膝関節に投与することでアンチエイジングや認知症進行予防、ALS進行予防、脳梗塞後遺症、痛み治療など多岐にわたり良い効果が出ていると報告が出てきています。

理論上は、炎症を抑える因子が非常に多く含まれているため、変形性膝関節症の治療として適している可能性が高いと考えますが、まだこれからの分野のため今後の研究に期待したいと思います。なお、米国では骨髄由来の培養上清液は6か月後に優位に膝の痛みが減り関節機能も改善したと報告もあります。

日本では幹細胞上清液を関節内または関節外へ投与しているクリニックも増えてきています。PRPでは再生しない軟骨が幹細胞上清液により修復・再生されたとの結果が出れば、非常に大きなインパクトになると思います。

 

まとめ:膝が痛いとき、どうすればいい?

まずは、専門の医師の診察を受け、膝関節の変形具合や動き・半月板や靭帯の損傷の有無・炎症や腫れの有無などを評価してもらう必要があります。レントゲン検査では、骨の評価しかできないため、上記治療選択をする場合にはエコー検査やMRI検査をする必要があります。

もし、炎症がメインの痛みであれば、PRP治療やカテーテル治療が望ましいです。過去の研究のVAS(痛みスケール)のヘリ幅を単純比較すると、カテーテル治療はPRP治療よりも2倍以上の改善幅があります。

もし、炎症が少ない場合や超ご高齢の場合にはクーリーフによる治療が望ましいと考えます。もちろん、変形や骨の中まで炎症が強い場合には外科的手術(人工関節置換術や骨切り術)が望ましい場合もあります。

膝が痛くて困っている場合は、専門の医師の診察を受け、納得する治療を受けましょう。

 

文責:福岡ペインケアクリニック院長 坂井伸彰

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