肋軟骨
肋軟骨炎(ろくなんこつえん)
胸を押すと痛い・深呼吸で痛む慢性胸痛
深呼吸するたびに胸がズキッと痛む、咳やくしゃみで激痛が走るのに、心臓の検査では「異常なし」——それが肋軟骨炎の典型的な経過です。
多くは安静と消炎鎮痛薬で改善しますが、3ヶ月以上続く場合は炎症部位に増殖した異常血管(モヤモヤ血管)が痛みを維持している可能性があります。
当院では、この異常血管に血管の内側から直接アプローチするカテーテル治療(TAME)を福岡・長崎の両施設で実施しています。
- 肋軟骨炎は「押すと痛い圧痛点」が診断の鍵:深呼吸・咳・体の動きで増減し、心臓病との鑑別が最初のステップです
- 慢性化するとモヤモヤ血管が炎症を維持:安静・消炎鎮痛薬だけでは改善しないケースがある理由がここにあります
- 当院ではカテーテル治療(TAME)を実施:マイクロカテーテルで異常血管を直接塞栓し、炎症の根本にアプローチします
- 治療後3ヶ月でVAS約50〜60%改善(参考データ):重篤な合併症の報告はほとんどありません
- 局所麻酔・日帰り・ステロイド不使用:翌日から通常の日常生活に戻れる方がほとんどです
① 肋軟骨炎とは何か
肋軟骨炎(ろくなんこつえん)は、肋骨と胸骨をつなぐ「肋軟骨」が炎症を起こし、前胸部に圧痛・動作時痛をきたす疾患です。圧迫・過負荷・感染後などを契機に発症し、特定の部位を指で押すと鋭い痛みが再現されます。腫れを伴う場合は「ティーツェ症候群」と呼びます。
胸壁の中で何が起きているか
肋軟骨は第1〜第10肋骨の先端と胸骨の間を橋渡しする軟骨組織です。呼吸のたびに伸縮するため繰り返しの負荷がかかりやすく、慢性炎症が定着すると血管・神経が異常増殖します。
湿布やロキソニンで一時的に楽になっても戻ってしまうのは、この「モヤモヤ血管」が残っている限り炎症が再燃するからです。
当院では、この「モヤモヤ血管」をターゲットに、マイクロカテーテルで血管内から直接塞栓するカテーテル治療(TAME)を行っています。外側から薬を塗るだけでなく、痛みの発生源そのものを減らすアプローチです。
② 症状・セルフチェック
肋軟骨炎の最大の特徴は「押すと痛い場所が明確にある」ことです。内臓の痛みと異なり、体の動きや姿勢によって痛みが増減するのが大きな手がかりになります。
肋軟骨の接続部を指でグッと押すと「ここだ!」という鋭い痛みがあります。第2〜第5肋軟骨に多く、この圧痛点の存在が診断の最重要ポイントです。
大きく息を吸い込むと胸が「ズキッ」と痛む。くしゃみをするたびに激痛が走り、怖くて思い切りくしゃみできない、という声がよく聞かれます。
寝返りを打つとき、シートベルトをつけるとき、棚の上の物を取ろうとしたとき——上半身をひねる瞬間にズキッとします。
じっとしていれば痛みは落ち着くことが多い。「動いたときだけ痛い」という特徴は、心臓の痛みとの大きな違いです。
3つ以上当てはまる場合は専門外来への相談を検討してください
- 胸骨の横・あばら骨との境目あたりに「押すと激痛」の圧痛点がある
- 深呼吸すると胸が痛む(特に吸い込む瞬間)
- 咳・くしゃみで胸に激痛が走る
- 寝返りを打つとき、横向きに起き上がるときに胸が痛む
- 心電図・胸部レントゲン・採血で「異常なし」と言われた
- ロキソニンや湿布を使っているが効果が一時的で戻ってしまう
- かぜで咳が長引いた後、または激しい運動後から痛みが始まった
- デスクワークや育児で前かがみの姿勢が長時間続いている
- MRI・レントゲンで異常なしと言われたが痛みだけが続いている
- 「ストレス」「気のせい」と言われたが明らかに胸に痛みがある
以下は肋軟骨炎とは別の、重大な疾患が隠れている可能性があります。自己判断せず速やかに受診を。
- 胸全体が「締め付けられる」感覚:冷や汗・吐き気・左肩への放散痛を伴う場合(心疾患の可能性)
- 突然始まった引き裂かれるような激しい胸痛:大動脈解離など緊急疾患の可能性
- 押しても押さなくても痛みが変わらない:体動と無関係の胸痛は内科的疾患の除外が必要
③ なぜ起こるのか(原因)
肋軟骨炎の原因は「繰り返しの物理的負荷」が最も多く、明確なきっかけがない場合も少なくありません。慢性化した症例では、モヤモヤ血管の増殖が痛みを維持する主な要因となります。
慢性的な炎症・低酸素状態が続くと、体は修復のために新しい血管を作ります。しかしこの新生血管は正常な血管より脆く、痛みを感知する神経線維と一緒に増殖するため、痛みの「発信基地」として機能してしまいます。超音波(エコー)検査でドプラモードを使うと血流信号として可視化できます。
④ 放置するとどうなる?
肋軟骨炎の多くは良性の経過をたどりますが、慢性化するほど自然回復は難しくなります。長期化すると日常生活の質が著しく低下し、呼吸の浅さから二次的な問題も生じてきます。
局所ステロイド注射は即効性がある一方、同じ部位への繰り返し注射(目安として3回以上)は軟骨や組織が脆くなるリスクがあります。「注射しても数週間しか続かない」場合は、モヤモヤ血管が根本原因として残っているサインです。
⑤ 検査
肋軟骨炎の診断は、主に「他の危険な疾患を除外すること」から始まります。肋軟骨炎自体は通常のレントゲンやMRIには写らないことが多く、「異常なし」という結果が出ても痛みが続く理由のひとつです。
MRIは骨・軟骨の形を見るには優れていますが、モヤモヤ血管のような微細な血管の増殖は通常のMRIでは映りません。「MRIで異常なし」は「骨や軟骨の形態に問題はない」という意味です。エコーを使った血流評価で初めてモヤモヤ血管の存在を確認できることがあります。
⑥ 似た病気との見分け方
胸の痛みには多くの原因があります。肋軟骨炎の診断は「他の病気ではない」と確認することから始まります。
⑦ 治療法
肋軟骨炎の治療は、発症からの期間と炎症の程度によって選択肢が変わります。急性期はまず安静と消炎鎮痛薬。慢性化した症例では、モヤモヤ血管へのアプローチが有効なケースがあります。
なぜ保存療法だけでは治らない場合があるのか
湿布・内服・ステロイド注射はいずれも「炎症から来る痛みの信号」を一時的に抑える治療です。慢性化した痛みの発生源である「モヤモヤ血管」には届かないため、一時的に楽になっても繰り返すのは構造上避けられません。「注射で楽になるが戻ってくる」を繰り返している方は、根本原因へのアプローチを検討する時期です。
当院の血管内治療は、痛みの根源であるモヤモヤ血管に直接働きかける治療です。エコーで血流を確認した上で、症状の強さ・罹患期間に応じて最適な方法を選択します。
カテーテル治療(TAME)
(経動脈的微細血管塞栓術)
| 方法 | マイクロカテーテルを使って患部の異常血管に直接アプローチ。一時的塞栓物質で異常血管を物理的に減少させる |
|---|---|
| 所要時間 | 約40〜60分。当日帰宅可能 |
| 回数の目安 | 基本1回 |
| 麻酔・入院 | 局所麻酔・入院不要 |
| 適応 | 中〜重度の難治性(3ヶ月以上続く慢性肋軟骨炎) |
カテーテル治療(TAME)は福岡ペインケアクリニック(福岡市博多区中洲)とながさきハートクリニック(長崎市)の両院で対応しています。
慢性化・難治性(3ヶ月以上)のケースに対応
※ 治療の適否は診察・エコー評価の結果で個別に判断します。強制はありません。
痛みの血管内治療は全て自由診療(保険適用外)です。ただし、確定申告における医療費控除の対象となる場合がありますので、領収書は大切に保管してください。なお、カテーテル治療は日帰り手術として民間生命保険の給付対象となることがあります。ご加入の保険会社にご確認ください。
- 心筋梗塞・肺塞栓など心臓・肺そのものの疾患が疑われる場合
- 化膿性感染(細菌感染による膿)を伴う場合
- 腎機能が著しく低下している場合(造影剤の使用が困難)
- 造影剤に対する重篤なアレルギーの既往がある場合
- 抗凝固療法(血液サラサラの薬)を中止できない状態
- 発症直後の急性期(まず標準治療を優先)
⑧ 一般整形外科との違い
整形外科は肋軟骨炎の骨・神経的な原因の除外や診断を得意とします。一方で、慢性的な軟部組織の炎症・モヤモヤ血管への介入は専門性が求められます。
- 整形外科・内科を受診したが「異常なし」「様子を見ましょう」と言われた
- ステロイド注射で一時的に楽になるが、また戻ってしまう
- ロキソニン・湿布を長期間使っているが効果が薄い
- MRIやレントゲンで異常がないのに、明らかに胸が痛い
- 手術は避けたいが、根本的な治療を受けたい
- 福岡・長崎周辺で専門的な痛みの相談先を探している
「本当にモヤモヤ血管があるのか」「自分は治療の対象なのか」——エコー検査で原因を確認するだけでも、次の一手が変わります。まずはLINEで症状をお聞かせください。
⑨ 治療実例
症例紹介は現在準備中です。LINEでのご相談や初診時に、医師から直接過去の治療例をお伝えすることができます。
⑩ よくあるご質問(FAQ)
まず内科または循環器内科で心臓の異常がないか確認してください。心臓に問題がなければ整形外科・ペインクリニックが専門となります。カテーテル治療(TAME)専門施設への受診もお考えください。
軽症なら2〜6週間で自然に改善するケースが多いです。3ヶ月以上続く場合は慢性化のサインです。モヤモヤ血管が形成されると自然回復は難しくなるため、長引く場合は早めに専門的な評価を受けることをお勧めします。
肋軟骨炎の慢性的な痛みを維持している「モヤモヤ血管(異常血管)」は、通常のMRI・レントゲンには映りません。「画像で異常がない=痛みがない」ではありません。超音波(エコー)検査で血流を評価することで、この異常血管の存在を確認できることがあります。
肋軟骨炎の胸痛は「指で押すと痛みが再現される」「体を動かすと増悪する」が大きな特徴です。心臓の痛みは押しても変化せず、締め付け感・冷や汗・左肩への放散痛を伴うことが多いです。ただし自己判断は危険ですので、心配な場合は必ず医師の診察を受けてください。
どちらも肋軟骨の炎症ですが、患部が目に見えて腫れる(しこり状になる)ものをティーツェ症候群と呼びます。腫れがなく圧痛・動作時痛だけのものが一般的な肋軟骨炎です。病態・治療方針は共通しており、どちらにも当院の治療は対応しています。
ロキソニン・湿布は「炎症から来る痛みの信号」を抑える薬です。しかし慢性化した肋軟骨炎の根本にあるモヤモヤ血管の増殖には直接作用しません。薬をやめると痛みが戻ってくるのはそのためです。モヤモヤ血管を減らすには、血管内からのカテーテル治療(TAME)が有効なケースがあります。
カテーテル治療(TAME:経動脈的微細血管塞栓術)は、手首や鼠径部の動脈から極細のマイクロカテーテルを進め、肋軟骨炎の患部に増殖したモヤモヤ血管(異常血管)を一時的塞栓物質で物理的に減少させる治療です。局所麻酔・日帰りで実施し、約40〜60分で終了します。炎症の根本にある血管そのものにアプローチするため、保存療法で改善しなかった難治性の症例でも効果が期待できます。
カテーテル治療は基本1回で完結します。治療後の経過を定期的に確認しながら進めます。
カテーテル治療(TAME)は308,000円(片側)・385,000円(両側)です。自由診療(保険適用外)ですが、医療費控除の対象となる場合があります。また、日帰り手術として民間生命保険の給付対象になることがありますのでご加入保険をご確認ください。
カテーテル治療は当日は安静を保ちますが、翌日からデスクワーク程度は可能なケースがほとんどです。スポーツ復帰は痛みの回復状況に応じて個別に判断します(目安:術後2〜4週間)。
両施設で受診・治療が可能です。福岡ペインケアクリニック(福岡市博多区中洲)とながさきハートクリニック(長崎市)にてご対応します。
カテーテル治療では造影剤(ヨード系)を使用します。重篤なアレルギー既往がある場合は原則として禁忌となります。軽度のアレルギー歴の場合は、前投薬を行ったうえで慎重に対応できるケースもあります。造影剤アレルギーの詳細については診察時にご相談ください。
問題ありません。ただし、ステロイドを繰り返し打っている場合は組織が脆くなっているケースがあるため、状態を確認したうえで治療の適否を判断します。「注射で一時的に楽になるが戻ってしまう」という方は、まさに当院のカテーテル治療が適しているケースです。
妊娠中は造影剤・X線を使用するカテーテル治療は原則として受けられません。妊娠・授乳期間中の肋軟骨炎は、まず安静・姿勢改善・バストバンドなどの保存療法で経過をみてください。
クッションや折りたたんだタオルを胸に抱え込みながらくしゃみ・咳をすると、胸郭の動きが抑えられて痛みが和らぎます(胸郭スプリンティング)。深呼吸が怖い方は、まず腹式呼吸(お腹で呼吸する練習)から始めると胸への負担が減ります。
再発予防には、①猫背・巻き肩の姿勢改善、②胸郭の柔軟性を保つストレッチ、③重い荷物の持ち方の工夫、④咳が長引く場合は早めに治療する——が効果的です。治療後は姿勢・動き方の指導も行っています。
⑪ まとめ
- 肋軟骨炎は「押すと痛い圧痛点」が診断の鍵——深呼吸・咳・体の動きで痛みが増減し、心臓病との鑑別が最初のステップです。
- 湿布・ロキソニンが効かない理由はモヤモヤ血管——慢性化した炎症には異常血管が形成されており、外側からのケアではそこに届きません。
- 「MRI異常なし」は原因不明ではない——エコー検査でモヤモヤ血管を確認することで、初めて痛みの原因が見えてきます。
- 当院ではカテーテル治療(TAME)を提供——ステロイド不使用・日帰り・局所麻酔。翌日から仕事に戻れます。
- 日帰り・ステロイド不使用の安全性に配慮した治療——局所麻酔で実施し、重篤な合併症はほとんど報告されていません。
- 長年の難治性でも改善の可能性がある——罹患期間が長くても、モヤモヤ血管が原因であれば治療効果が期待できます。諦める必要はありません。
- 福岡ペインケアクリニック・ながさきハートクリニックで受診可能——まずエコーで状態を確認し、治療が適応かどうかをお伝えします。「まだ迷っている」でも歓迎します。
「異常なし」と言われたのに胸が痛い。何ヶ月も、何年も続いている。その痛みは決して気のせいではありません。カテーテル治療は日帰り・ステロイド不使用で、モヤモヤ血管の発生源に直接アプローチします。
翌日から仕事復帰可能。深呼吸や咳のたびに痛みをこらえてきた方こそ、一度エコーで確認してみてください。
日本専門医機構認定内科専門医 / 日本医師会認定スポーツ健康医
循環器内科医としての血管治療技術を応用した「痛みの血管内治療」を専門とし、2,500例以上の血管内治療を経験。肋軟骨炎・難治性胸壁痛を含む難治性疼痛に対して地元九州で動注治療・カテーテル治療を行っている。
- Proulx AM, Zryd TW. Costochondritis: diagnosis and treatment. Am Fam Physician. 2009;80(6):617-620.
- Ayloo A, et al. Evaluation and Treatment of Musculoskeletal Chest Pain. Prim Care. 2013;40(4):863-887.
- Okuno Y, et al. Embolotherapy for Neovascularization-Related Musculoskeletal Pain. J Vasc Interv Radiol. 2013;24(6):786-796.
- Okuno Y, et al. Transcatheter Arterial Embolization for Tendinopathy (TAME). Semin Intervent Radiol. 2019.
- 日本整形外科学会 症状・病気をしらべる「胸の痛み」(2024年版)
- 岡野 裕 著『長引く痛みの原因は、血管にあった』ワニブックス, 2016.
九州ペインケアネットワーク
Kyushu PainCare Network
福岡ペインケアクリニックと、ながさきハートクリニックは、
モヤモヤ血管治療が受けられるクリニックで、同水準の治療とサポート体制を提供しています。


