有痛性腱板断裂
有痛性腱板断裂(ゆうつうせいけんばんだんれつ)
夜間痛・肩が上がらない・手術したくない方へ
夜中に肩が痛んで目が覚める。腕を上げるたびにズキッと痛む。MRIで「腱板断裂」と言われ、「手術しかない」と告げられた——それでも、できれば外科手術は避けたい方へ。
実は、腱板が切れていても痛みなく生活している方は大勢います。痛みの原因は「切れていること」だけではなく、患部に増殖した異常血管(モヤモヤ血管)による炎症が大いに関係しているからです。当院では、このモヤモヤ血管に直接アプローチするカテーテル治療(TAME)を福岡・長崎の両院で提供しています。
- 腱板断裂で長引く痛みの正体はモヤモヤ血管(異常血管)——断裂が残っても痛みを消せる可能性がある
- MRI所見と痛みの強さは一致しない——「小さな断裂なのに激痛」「大きな断裂でも無症状」の理由を解説
- 当院のカテーテル治療(TAME)は日帰り・局所麻酔——長期入院・全身麻酔不要。翌日からデスクワーク復帰可能
- 夜間痛に悩む難治例ほど効果が期待できる——エビデンスあり(Okuno et al. 2017)
- ステロイドに頼らない炎症コントロール——繰り返す注射の限界を超える新しい選択肢
① 有痛性腱板断裂とは
有痛性腱板断裂とは、肩関節を動かす4つのインナーマッスル(腱板)が断裂し、痛みや機能低下を引き起こしている状態です。60代以上では約20〜30%が無症状の断裂を持つとされており(Yamamoto et al. 2010)、断裂=痛みではありません。痛みの正体は断裂そのものより、慢性炎症に伴い増殖するモヤモヤ血管(病的新生血管)にあります。
腱板の中で何が起きているか
断裂部に炎症が続くと、修復のために異常新生血管(モヤモヤ血管)が大量に侵入します。この血管は痛覚神経線維とセットで増殖するため、「断裂が小さくても激しい夜間痛」が起きます。
ステロイド注射で一時的に炎症を抑えても、モヤモヤ血管が残る限り炎症は再燃します。「注射して数ヶ月で痛みが戻る」のはそのためです。
モヤモヤ血管が痛みの根本原因なら、その血管を塞ぐことで痛みを断ち切れる——これがカテーテル治療(TAME法)の考え方です。腱が切れていても、炎症さえ取れれば「痛みのない断裂」として生活できます。
② 症状・セルフチェック
有痛性腱板断裂の代表的な症状は「動作時の痛み」「夜間痛」「筋力低下」の3つです。五十肩(凍結肩)と混同されやすいですが、関節が全方向に固まる五十肩と違い、特定の角度だけ痛むのが特徴です。
腕を横から上げるとき60〜120度の角度で「ズキッ」と痛みが走る。上げきると楽になる「痛い角度の窓」が特徴。洗濯物を干せない・高い棚に手が届かない原因に。
仰向けで寝ると肩に重みが集中して関節内圧が上昇。夜中に寝返りのたびに目が覚める。朝方が一番つらく、睡眠の質が著しく低下します。
腕を支える腱板が切れているため、腕が重くなる・着替えで腕が通せない・利き手が思うように使えない。重いものを持ち上げようとすると腕がストンと落ちることも。
肩を動かすと「ゴリゴリ」「ジョリジョリ」という音や感触がある。断裂した腱が隣接する構造物に擦れることで生じます。ゴルフのバックスイングで痛みが走ることも。
エプロンの紐を結ぶ・ブラのホックを留める・ズボンの後ろポケットに手を入れる——「結帯動作」と呼ばれるこれらの動きで痛みが走り、日常の何気ない動作がつらくなります。
転倒や重量物を持ち上げた瞬間に「ブチッ」という音や感覚があり、その直後から腕に力が入らなくなった——急性断裂に特徴的なエピソードです。
3個以上当てはまる場合は専門医への受診を検討してください
- 腕を横から上げると、途中(肩の高さ付近)で強い痛みが走る
- 夜中に肩が痛んで目が覚める。寝返りがつらい
- 着替え・エプロンの紐・ブラのホックが自分でできない
- 洗濯物を干す・高い棚に手を伸ばす動作が困難
- 腕を下ろすとき、途中でストンと力が抜ける感覚がある
- MRIで「腱板断裂」と言われたが、五十肩と言われ続けていた
- ステロイド注射を受けたが、2〜3ヶ月で痛みが戻る
- リハビリを半年以上続けているが、夜間痛だけが改善しない
- ゴルフ・テニスのスイングで痛みが走り、スポーツができない
- 糖尿病があり、傷の治りが遅く炎症が長引きやすい
- 感染が疑われる場合:肩が真っ赤に腫れ上がり、発熱を伴う激痛がある(化膿性関節炎の疑い)
- 外傷直後で腕が動かない場合:転倒や衝撃の後、腕が全く上がらなくなった、または強い変形がある
- 手・指に強いしびれや麻痺がある場合:頸椎疾患や神経障害の可能性があり、まず整形外科での精査が必要です
③ 原因
腱板断裂の最大の原因は「加齢による腱の変性(劣化)」です。40代以降は腱への血流が徐々に低下し、弾力性が失われて断裂しやすくなります。さらに慢性的な使いすぎや一度の外傷が引き金になります。
④ 放置するとどうなる?
腱板断裂は放置すると断裂が拡大し、最終的に変形性肩関節症へと進行するリスクがあります。また夜間痛が続くことで「痛みの記憶」が脳に刻まれ、より治りにくい状態になります。
ステロイドは炎症を強力に抑えますが、同じ部位への繰り返し投与は腱の脆弱化を招く可能性が指摘されています。「注射でいったん楽になるが、すぐ戻る」が続いている場合、モヤモヤ血管へのアプローチを検討する段階かもしれません。
⑤ 検査
腱板断裂の確定診断にはMRIが必須ですが、MRI所見と痛みの強さは必ずしも一致しません。超音波(エコー)による血流評価と組み合わせることが重要です。
MRIでは腱板断裂が映らないケースでも、エコーで腱付着部や肩峰下滑液包のモヤモヤ血管を確認できる場合があります。痛みの原因が「断裂」より「炎症と異常血管」にある証拠です。
⑥ 似た病気との見分け方
肩の痛みは腱板断裂だけでなく、複数の疾患が重なっていることがあります。以下の病気との見分けが重要です。
⑦ 治療法
治療は「保存療法(手術なし)」を基本として、改善しない場合に血管内治療を検討します。まずは身体への負担が少ない方法から順に試みます。
なぜ保存療法だけでは治らない場合があるのか
湿布・ステロイド・リハビリはいずれも「モヤモヤ血管そのもの」を減らすことができません。異常血管が残る限り炎症の発生源は消えず、ステロイドで一時的に火を消しても血管が残っていれば再燃します。
当院の血管内治療は、痛みの根源であるモヤモヤ血管に直接働きかける治療です。エコーで血流を確認した上で、症状の強さ・罹患期間に応じて最適な方法を選択します。
注射治療(ステロイド)
(エコーガイド下注射)
| 方法 | 超音波(エコー)を見ながら炎症部位にステロイドを正確に注入。異常血管周囲の炎症を直接抑制する |
|---|---|
| 所要時間 | 約5分。当日帰宅可能 |
| 回数の目安 | 月1回程度。効果を確認しながら複数回実施 |
| 麻酔・入院 | 麻酔不要・入院不要 |
| 適応 | 初回治療・軽〜中等症の夜間痛・カテーテル前の効果確認にも |
カテーテル治療(TAME)
(経動脈的微細血管塞栓術)
| 方法 | 手首の動脈から極細のカテーテルを挿入し、患部の異常血管に直接アプローチ。一時的塞栓物質で異常血管を物理的に減少させる |
|---|---|
| 所要時間 | 約40〜60分。当日帰宅可能 |
| 回数の目安 | 基本1回(効果確認後に注射治療追加検討) |
| 麻酔・入院 | 局所麻酔・入院不要 |
| 適応 | 夜間痛が強い方・保存療法抵抗性の難治例・外科手術回避希望の方 |
カテーテル治療で腱板の断裂そのものが治るわけではありません。しかし、腱板が切れていても痛みなく生活している方は大勢います。痛みの原因は「切れていること」だけではなく、炎症(モヤモヤ血管)が大いに関係しているからです。モヤモヤ血管を減らすことで、「腱板は切れているけれど痛くない」という状態に近づける可能性があります。そして炎症と痛みが減った後は、リハビリ(コンディショニング)で肩を支える力を取り戻すことが重要です。
注射治療・カテーテル治療はいずれも福岡ペインケアクリニック(福岡市博多区中洲)とながさきハートクリニック(長崎市)の両院で対応しています。
Okuno Y, et al. 「Transarterial Embolization of Neovascularity for Refractory Nighttime Shoulder Pain: A Multicenter, Open-Label, Feasibility Trial.」 J Vasc Interv Radiol. 2022;33(12):1468-1475. 日本国内5施設で、保存療法で改善しなかった夜間肩痛100例(症候性腱板断裂24例・拘縮肩76例)に血管内治療(TAE)を行い、6ヶ月間観察した多施設試験。全例で異常血管(モヤモヤ血管)が確認され、腱板断裂群と拘縮肩群で改善率に差はありませんでした。
※ NRS(数値評価スケール):0=痛みなし、10=最大の痛み。夜間痛スコアは治療前6.4から6ヶ月後1.6へ低下(P<0.001)。腕を前に上げられる角度(可動域)も97°→151°に改善しました。数値は文献の平均値で、効果には個人差があります。
エコーガイド下で正確に炎症部位へ
異常血管を根元から塞栓
クリニック
ハートクリニック
【主なリスク・副作用】刺入部の内出血(約4%)、薬剤・造影剤によるアレルギー反応(約2%)、治療部位の一時的な痛みの増加(約5%)が生じることがあります。いずれも多くは自然に軽快します。効果には個人差があります。
痛みの血管内治療は全て自由診療(保険適用外)です。ただし、確定申告における医療費控除の対象となる場合がありますので、領収書は大切に保管してください。なお、カテーテル治療は日帰り手術として民間生命保険の給付対象となることがあります。ご加入の保険会社にご確認ください。
- 完全麻痺状態:腕が全く上がらず重度の神経麻痺がある方
- 感染の疑い:発熱・強い腫れがあり細菌感染(化膿性関節炎)が疑われる方 → まず整形外科へ
- 造影剤アレルギー:カテーテル治療では事前アレルギー検査で確認。重篤なアレルギー歴がある方は要相談
- 重篤な腎機能障害:造影剤の代謝に問題がある方は代替手段を検討
- 高い競技復帰を目指す若年アスリート:腱の縫合手術の方が適している場合があります
⑧ 一般整形外科との違い
整形外科は腱板断裂の骨・腱の構造的な診断・手術を得意とします。一方で、慢性化した夜間痛・モヤモヤ血管への血管内介入は専門性が求められます。
保存療法を3か月以上続けても痛みが減らない方、「手術しかない」と言われたが手術は避けたい方、ステロイド注射を繰り返し打ってもすぐぶり返してしまう方——そのような方が当院の最も得意とする患者層です。
まずは気軽にLINEでご状況をお聞かせください。受診前の質問もOKです。
⑨ 治療実例
※ 効果には個人差があります。その他の症例は治療実例一覧をご覧ください。
⑩ よくあるご質問(FAQ)
患者さんからよくいただく質問にお答えします。診察・治療の判断はすべて個別の状態によります。
⑪ まとめ
- 腱板が切れていても痛くない人は大勢いる——痛みの原因は「切れていること」だけでなく、炎症(モヤモヤ血管)が大いに関係しています。モヤモヤ血管を減らせば「切れているけれど痛くない」状態に近づける可能性があります。
- MRI所見と痛みは一致しない——「大きな断裂でも無症状」「小さな断裂で激痛」はモヤモヤ血管の量が原因です。エコーで血流を評価することが正確な治療方針の決定に重要です。
- ステロイド注射の繰り返しには限界がある——血管が残る限り炎症は再燃します。根本にあるモヤモヤ血管へのアプローチが必要です。
- カテーテル治療(TAME)はステロイド不使用・日帰り・局所麻酔——全身麻酔・長期入院不要。翌日からデスクワークに戻れます。高齢者・糖尿病合併例にも対応しています。
- 炎症と痛みが減った後はリハビリ(コンディショニング)が重要——インナーマッスルを鍛えて肩を支える力を取り戻すことが、再断裂・再炎症の予防と治療効果の持続につながります。
- 日本の多施設研究で有効性が報告されている——腱板断裂を含む夜間肩痛100例の研究で、夜間痛スコアが治療前6.4から6ヶ月後1.6へ低下し、重篤な合併症はありませんでした(Okuno et al. 2022)。
- 「手術しかない」と言われた方にも選択肢がある——保存療法→血管内治療→手術と段階的に検討でき、手術を回避できるケースも多くあります。
- 福岡ペインケアクリニック・ながさきハートクリニックで受診可能——まずはLINEでお気軽にご相談ください。
そんな方にも、日帰り・ステロイド不使用・翌日デスクワーク復帰可能な
カテーテル治療という選択肢があります。まず一度、肩の状態を診させてください。
日本専門医機構認定内科専門医 / 日本医師会認定スポーツ健康医
循環器内科医としての血管治療技術を応用した「痛みの血管内治療」を専門とし、2,500例以上の血管内治療を経験。有痛性腱板断裂を含む難治性疼痛に対して地元九州で動注治療・カテーテル治療を行っている。
- Okuno Y, Yasumoto T, Koganemaru M, et al. Transarterial Embolization of Neovascularity for Refractory Nighttime Shoulder Pain: A Multicenter, Open-Label, Feasibility Trial. J Vasc Interv Radiol. 2022;33(12):1468-1475.e8.(PMID: 35995121)
- Yamamoto A, et al. Prevalence and risk factors of a rotator cuff tear in the general population. J Shoulder Elbow Surg. 2010;19(1):116-120.
- Okuno Y, Iwamoto W, Matsumura N, et al. Clinical outcomes of transcatheter arterial embolization for adhesive capsulitis resistant to conservative treatment. J Vasc Interv Radiol. 2017;28(2):161-167.
- 日本整形外科学会「肩腱板断裂診療ガイドライン 2014」南江堂.
- 奥野祐次 著『長引く痛みの原因は、血管にあった』ワニブックス, 2016.
九州ペインケアネットワーク
Kyushu PainCare Network
福岡ペインケアクリニックと、ながさきハートクリニックは、
モヤモヤ血管治療が受けられるクリニックで、同水準の治療とサポート体制を提供しています。


