アキレス腱炎
アキレス腱炎・アキレス腱症
かかとの後ろの痛み・腱の腫れ・しこり
「朝の一歩目がズキッと痛い」「ランニング後にかかとの後ろがズーンと重い」——アキレス腱の痛みは、放置しているうちにアキレス腱症(慢性アキレス腱炎)に移行し、自然治癒が難しくなることがあります。
慢性化した痛みの正体は異常血管(モヤモヤ血管)の増殖です。湿布・安静・ストレッチだけではこの血管は消えません。当院では、長引く難治例はもちろん、「まだ日が浅くても炎症を早期に抑えてスポーツや仕事にすぐ戻りたい」という方にも、血管内から根本にアプローチする治療をご提案しています。
- アキレス腱炎が慢性化すると「アキレス腱症」に移行し、自然治癒が難しくなる
- 難治性の痛みの正体は「異常血管(モヤモヤ血管)」で、湿布や安静では消えない
- 当院の治療は、血管の内側から直接モヤモヤ血管を減らす「動注治療」「カテーテル治療」。長引く難治例はもちろん、早くスポーツや仕事に戻りたい方にも対応できる
- 2025年の多施設研究では、カテーテル治療後に痛みスコア(NRS)が6.7→1.5に改善し、臨床成功率81.7%・腱断裂ゼロと報告されている(82例・24か月追跡)
- 局所麻酔・日帰り・ステロイドを使わないため、腱断裂リスクを上げず翌日から仕事復帰が可能
① アキレス腱炎・アキレス腱症とは
アキレス腱は、ふくらはぎの筋肉(腓腹筋・ヒラメ筋)とかかとの骨(踵骨)をつなぐ、人体で最も強靭な腱です。歩行・走行・ジャンプのあらゆる動作に関わります。
繰り返しの負荷で微細な損傷が蓄積し炎症が生じた状態がアキレス腱炎。多くは2〜4週間の安静で回復しますが、炎症が長引いて組織が変性・線維化した状態をアキレス腱症(Achilles Tendinopathy)と呼びます。
通常の腱には血管がほとんど通っていません。しかし慢性炎症が続くと、痛みを感じる神経と一緒に異常血管(モヤモヤ血管)が増殖します。この血管が痛みを維持し続けるため、安静や湿布・ストレッチだけでは消えず、「難治性の痛み」につながります。
湿布・消炎鎮痛剤・衝撃波・注射といった従来の治療は、いずれも「血管の外から」炎症を抑えるアプローチです。これに対し、動注治療・カテーテル治療は血管の内側から直接、異常血管に薬剤を届けて炎症の根本を断つという新しいアプローチです。
② 症状の特徴とセルフチェック
主な症状
朝の一歩目や、長座後の立ち上がり時に強い痛みが出ます。歩き続けると少し和らぐことがありますが、また戻るのが典型的なパターンです。
アキレス腱の途中や踵骨付着部をつまむと強い痛みがあります。腱が肥厚して「しこり」のように触れることもあります。
ランニング・ジャンプ・階段昇降で痛みが増します。運動後に数時間〜翌日まで残る場合は変性(腱症化)が進んでいるサインです。
痛みでつま先立ちができない、または力が入らない状態になります。ふくらはぎ全体の筋力低下にも波及します。
セルフチェックリスト
- 朝の一歩目や立ち上がり時にかかとの後ろがズキッと痛む
- アキレス腱を指でつまむと強い痛みがある
- アキレス腱が以前より太く腫れている、またはしこりがある
- つま先立ちが痛くてできない
- ランニング中〜後に痛みが続く
- 新しい靴に変えてから、またはトレーニング量を増やしてから痛くなった
- 3か月以上、ストレッチや湿布を続けているが改善しない
3項目以上に当てはまる場合はアキレス腱炎・アキレス腱症の可能性があります。特に3か月以上続いている方は、早めに専門医への相談をおすすめします。
すぐに受診が必要なサイン
・運動中に「バチッ」という断裂感があり、その後つま先立ちが全くできない → アキレス腱断裂の疑い
・患部が赤く腫れ上がり、高熱を伴う → 感染症(蜂窩織炎など)の可能性
③ 原因・なりやすい人
アキレス腱炎は「使いすぎ(オーバーユース)」が基本ですが、複数の要因が重なって発症・慢性化します。中高年の市民ランナー、立ち仕事の多い職種、跳躍系スポーツ選手に多く報告されています。
| 分類 | 具体的な要因 |
|---|---|
| 過負荷・使いすぎ | 走行距離の急増、ジャンプ動作の反復、長時間の立ち仕事 |
| 身体的要因 | ふくらはぎの柔軟性低下、偏平足・過回内(足首が内側に倒れる)、下肢アライメント異常 |
| 靴・環境 | クッション性の低い靴、ヒール高の急な変化、硬い路面でのトレーニング |
| 加齢・全身疾患 | 加齢による修復力低下(40〜50代以降に慢性化しやすい)、高尿酸血症、フルオロキノロン系抗菌薬の使用歴 |
④ 放置するとどうなるか
痛みを我慢して使い続けると、段階的に悪化します。特に亜急性期〜慢性期での放置が「難治化」の分岐点です。
| 段階 | 状態 | 特徴と対処 |
|---|---|---|
| 急性期 | 炎症・微細損傷 | 2〜4週間の安静・アイシングで回復することが多い。この時期の対処が重要 |
| 亜急性期 | 慢性化の入り口 | 修復が追いつかず変性が始まる。エコーでモヤモヤ血管が出現し始める |
| 慢性期(腱症) | 線維化・肥厚 | 腱がしこり状になる。安静時にも痛みが出る難治性の状態。保存療法のみでは改善しにくい |
| 断裂リスク | 腱の脆弱化 | 変性した腱は断裂しやすい。ステロイド注射はリスクをさらに高める |
アキレス腱内へのステロイド注射は短期的に痛みを和らげることがありますが、腱を脆弱化させ断裂リスクを高める可能性が報告されています。当院の治療はステロイドを使用しません。
⑤ 検査・診断の流れ
| 検査 | 確認できること | 備考 |
|---|---|---|
| 超音波(エコー) | 腱の腫れ・変性範囲、モヤモヤ血管(異常血流)の有無と量 | 当院では初診時に必須。治療方針の決定と効果判定に使用。リアルタイムで血流が見える |
| MRI | 腱内部の変性・断裂範囲、踵骨後部滑液包炎、骨浮腫 | 詳細な形態評価に有用。ただし異常血管のリアルタイム評価はエコーが優れる |
| X線(レントゲン) | 骨折、踵骨の変形(ハグルンド変形)の有無 | 腱そのものは写らない。骨病変の除外に使用 |
初期の炎症や微細な血管増生(モヤモヤ血管)は、MRIやレントゲンでは写らないことがほとんどです。エコーのドップラー機能で確認すると異常血流が発見されるケースが多くあります。
⑥ 似た疾患との鑑別
かかと周辺の痛みはアキレス腱炎以外にも複数の疾患で起こります。部位と特徴で区別します。
腱本体でなく周囲組織の炎症。動かすとギシギシ感がある。安静で改善しやすい。
アキレス腱と踵骨の間にある滑液包の炎症。腱の奥まった部分が痛む。靴擦れが誘因のことも。
かかとの裏側の痛みが特徴。朝の一歩目に痛む点は共通だが、痛む部位が異なる。
踵骨後上部の突出による骨の変形。靴に当たって滑液包炎を引き起こす。
急激な痛みと腫脹が特徴。エコーで腱の線維連続性を確認して診断する。
10〜14歳頃の成長期に起こる踵骨骨端症。大人にはみられない。
⑦ 治療法
保存療法(第一選択)
初期〜中等症のアキレス腱炎には、まず保存療法を行います。特にエキセントリック運動(遠心性収縮訓練)は、12週間の継続で腱の強度と痛みの両方を改善するエビデンスがあります。
| 治療法 | 目的・効果 | 注意点 |
|---|---|---|
| 安静・アイシング | 急性期の炎症軽減 | 慢性期には効果が限定的 |
| ストレッチ・エキセントリック運動 | 腱の柔軟性・強度改善・再発予防 | 効果が出るまで3〜6か月以上かかることも。継続が重要 |
| インソール(足底板) | 偏平足・過回内による負荷を軽減 | 根本治療ではなく補助的位置づけ |
| NSAIDs(消炎鎮痛剤) | 痛みの一時的な軽減 | 急性期の短期使用が適切。長期使用は腱修復を阻害する可能性 |
| 体外衝撃波療法(ESWT) | 組織修復の促進・異常血管の減少 | 複数回通院が必要(週1回×3〜5回など)。施術中の痛みがある |
アキレス腱のセルフケアストレッチ
ストレッチはアキレス腱炎の再発予防と回復促進に重要です。正しいフォームで継続することで、ふくらはぎの柔軟性を高め腱への負荷を軽減できます。カーフレイズの遠心性(エキセントリック)動作が特に有効です。
テーピングと活動制限
アキレス腱炎のテーピングは、腱への牽引ストレスを軽減し活動中の痛みを和らげる補助手段です。ただしテーピングは根本治療ではなく、活動中の「保護」が目的です。
動注治療・カテーテル治療(難治例・早期復帰を目指す方へ)
当院ではエコーで確認した異常血管(モヤモヤ血管)を標的とした低侵襲の血管治療を行っています。どちらもステロイドを使用しません。※新しい治療方法であるため自費診療となります。
これまで東京など都市部の一部施設でしか受けられなかった動注治療・カテーテル治療が、福岡(福岡ペインケアクリニック)・長崎(ながさきハートクリニック)でも受けられるようになりました。九州にお住まいの方も、遠方への通院なくこの治療をお受けいただけます。
・保存療法(ストレッチ・リハビリ・衝撃波など)を続けているが改善しない難治例
・罹患期間が3か月未満であっても、炎症を血管内から直接減らして早期のスポーツ・仕事復帰を目指したい方
・ステロイド注射を避けたい方、腱断裂のリスクを下げたい方
(どうちゅうちりょう)
| 方法 | 足首の動脈から極細の注射針で薬剤を投与 |
|---|---|
| 所要時間 | 3〜5分 |
| 回数の目安 | 2〜3回 |
| 適応 | 軽症〜中等症 |
| 麻酔・入院 | 麻酔なし・日帰り |
| 方法 | 脚の付け根からカテーテルを挿入し患部へ誘導し、直接薬剤を投与 |
|---|---|
| 所要時間 | 30〜60分 |
| 回数の目安 | 原則1回で完結(後日動注治療を補助的に追加することはある)。プロアスリートは2回行うこともある |
| 適応 | 中〜重症・長期難治例・広範囲の変性 |
| 麻酔・入院 | 局所麻酔・日帰り |
カテーテル治療は動注治療よりも広範囲・深部の異常血管にアプローチできるため、痛みの改善が早期に現れることが多い傾向があります。一方、動注治療は手技がよりシンプルで、エコーで経過を確認しながら段階的に進められる利点があります。
カテーテル治療(TAME)の臨床成績データ
カテーテルを用いたアキレス腱症の異常血管塞栓治療(TAME:Transcatheter Arterial Micro Embolization)については、2025年に現時点で最大規模・最長期の多施設共同研究が報告されています。
(12か月でNRS 50%以上改善)
術前→24か月
術前→24か月
合併症(24か月)
どちらの治療を選ぶか
初診時のエコー検査でモヤモヤ血管の量・変性の範囲を確認したうえで、医師がご説明します。
料金(自由診療)
| 治療 | 片側 | 両側 |
|---|---|---|
| 動注治療 | 30,800円(税込) | 41,800円(税込) |
| カテーテル治療 | 308,000円(税込) | 385,000円(税込) |
健康保険(公的保険)は適用外となります。ただし、民間の生命保険・医療保険をご加入の方は、カテーテル治療が「日帰り手術」として給付金の対象となる場合があります(保険会社・契約内容によって異なります)。また、医療費控除の対象となる場合もあります。
当院の治療が向かないケース(禁忌・注意事項)
・造影剤アレルギーがある方:カテーテル治療は造影剤を使用しますが、造影剤を使用しない動注治療で対応できる場合があります。まずはご相談ください。
・アキレス腱が完全断裂している方:断裂の修復には外科的治療(縫合・再建)が第一選択となります。
・全身性の活動性感染症がある方:感染が落ち着いてからの治療となります。
・重篤な腎機能障害のある方:造影剤使用の可否を事前に確認する必要があります(動注治療で代替できる場合あり)。
治療後の経過とリスク
治療直後に痛みが完全に消えるわけではなく、炎症の鎮静化に伴い数週間かけて徐々に改善するのが一般的な経過です。
処置後1〜3日程度、穿刺部の腫れ・痛み・重だるさが出ることがあります。内出血(青あざ)が生じる場合がありますが、通常2週間程度で消失します。
すべての方に同じ効果が現れるわけではありません。エコー所見・変性の程度・罹患期間によって改善の度合いに差が生じます。
⑧ 一般整形外科との違い
アキレス腱炎は多くの整形外科で診られます。当ネットワークが血管内治療専門として担う役割を整理します。
| 比較項目 | 一般整形外科 | 九州ペインケアネットワーク |
|---|---|---|
| 対象とする症例 | 急性〜慢性の幅広い患者 | 難治例はもちろん、早期復帰を目指す方・ステロイドを避けたい方も対象 |
| エコーによる 血流評価 |
施設によって異なる | 初診時に必須。異常血管の量・範囲を定量評価 |
| 主な治療 | 安静・リハビリ・ESWT・ステロイド | 動注治療 / カテーテル治療(ステロイド不使用) |
| 腱断裂リスク | ステロイド注射で上昇する可能性 | ステロイド不使用のため該当リスクなし |
| 入院の要否 | 手術の場合は入院 | いずれも局所麻酔・日帰り |
| 診療形態 | 保険診療中心 | 血管治療は自由診療(別途費用説明あり) |
「整形外科でリハビリを続けたが改善しない」「衝撃波治療を試したが効果がなかった」「ステロイド注射を勧められたが断裂が怖い」——こうした難治例はもちろん、まだ罹患期間が短くても「早くスポーツや仕事に復帰したい」という方にも、動注治療・カテーテル治療は有効な選択肢です。
⑨ 治療実例
⑩ よくある質問
⑪ まとめ
この記事のポイント(再掲)
- アキレス腱炎が慢性化すると「アキレス腱症」に移行し、自然治癒が難しくなる
- 難治性の痛みの正体はモヤモヤ血管(異常血管)。湿布・安静では消えない
- 診断はエコーが重要。MRIで「異常なし」でも異常血流が見つかることがある
- 保存療法の第一選択はエキセントリック運動+負荷管理。ただし罹患期間が短くても早期復帰を目指す場合は血管治療が適応になる
- 動注治療(2〜3回)とカテーテル治療(1回)の選択はエコーのモヤモヤ血管の量・範囲で決める
- 2025年の多施設研究(82例・24か月追跡)でTAMEの臨床成功率は81.7%、腱断裂・重篤な合併症はゼロ
- いずれも局所麻酔・日帰り・ステロイド不使用
「他院でリハビリを続けているが改善しない」「ステロイドは避けたい」という方はもちろん、「まだ受傷して日が浅いが、できるだけ早くスポーツや仕事に戻りたい」という方も、ぜひ一度ご相談ください。エコー検査でモヤモヤ血管の有無を確認し、最適な治療法をご提案します。
日本専門医機構認定内科専門医 / 日本医師会認定スポーツ健康医
動注治療とカテーテル治療を中心とした痛み治療を専門とし、これまで2,500例以上の血管内治療を経験している。
- Alfredson H, et al. Heavy-load eccentric calf muscle training for the treatment of chronic Achilles tendinosis. Am J Sports Med. 1998;26(3):360-6.
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- Sugihara E, Bhatia A, Shibuya M, et al. A Retrospective, Multicentric Evaluation of the Safety and Efficacy of Transcatheter Arterial Micro Embolization for Refractory Achilles Tendinopathy. Cardiovasc Intervent Radiol. 2025;48:1725–1734. doi:10.1007/s00270-025-04144-1
九州ペインケアネットワーク
Kyushu PainCare Network
福岡ペインケアクリニックと、ながさきハートクリニックは、 モヤモヤ血管治療が受けられるクリニックで、同水準の治療とサポート体制を提供しています。


